同時代的に起こる材料・構法的変化

 1960~70年代にはALCパネルなど、今日当たり前の工業化された建材や構法が普及してきている。石膏ボードは1961年頃から急増し、ALC版は1962年にヨーロッパから技術導入された。

 アルミサッシが本格的に使われはじめたのは前川國男の日本相互銀行本店(1952年)からであるが、住宅用アルミサッシの普及は1960年代の日本の住宅を大きく変えた。1965年に住宅用引違い規格品が登場し、1966年にKJ部品となった。前後して1965~67年に多くのメーカーがアルミサッシを発売して普及し始め、1969年にはアルミサッシュの生産量がスチールサッシュを上回った。また現代のガラスとして定着したフロート板ガラスは1966年から国内生産が開始されている。

 ユニットバスは、1958年にTOTOがFRPの浴槽を販売したが、日本で最初に本格的にユニットバスを導入したのはホテルニューオータニ(1964年)であった。東京オリンピックの年に竣工させるために短工期でつくる必要があり、プレファブリケーションによって現場での工事手間を最小にするユニットバスが開発された。マンションブームの中で1968年頃からレディメードのユニットバスに転換し、1975年にBL部品認定されるなど定着していった。ユニットバスはFRPの工場製品を取り付けるだけであり、それまでの現場での防水工事をなくすなど、建築生産の大きな質的変化をもたらした。

参考文献

1. 内田賞選定委員会「内田賞顕彰事績集 日本の建築を変えた八つの構法」,内田賞委員会事務局,2002年

2. 内田祥哉「ディテールで語る建築」、彰国社、2018年

3. 門脇耕三、青柳憲昌ほか「ディテール 217 戦後名住宅の新しい見方」、彰国社、2018年7月号

4. 佐藤考一ほか「図表でわかる 建築生産レファレンス」、彰国社、2017年

(本記事は、2022年度日本建築学会大会(北海道)建築計画部門PD資料「構法史のアクチュアリティー構法と歴史から、いまつくることを考える」論考集掲載の拙稿「構法史からみた近代と現代」をもとにしています)