タイル張りの改良に見る表情の変化

 タイル張りは近代建築の主要な外壁構法の一つだが、本質的な剥落のリスクや施工の合理化から段階的な改良が進められてきた。そのため他の工業材料と異なり明確な技術的分岐点をあげることが難しいが、初期の積み上げ張りからコテで叩き締める改良圧着張り、機械で振動を与える密着張り、タイルをユニット化したモザイクタイル張りなど工法の変化を遂げてきた。

 主に昭和30~50年代で手張り工法の改良が進み、今日ではタイルを金物に引掛ける乾式工法や弾性接着剤張りなどさらに改良が進んでいる。総じてタイル張りの表情は手仕事的なばらつきのある張り方から均質なものへと変化し、それが近代建築におけるタイル張りが現代から見ると表情豊かな価値を有している理由ともなっているだろう。

(本記事は、2022年度日本建築学会大会(北海道)建築計画部門PD資料「構法史のアクチュアリティー構法と歴史から、いまつくることを考える」論考集掲載の拙稿「構法史からみた近代と現代」をもとにしています)

KUMAGAI LAB

東京理科大学工学部建築学科 熊谷研究室