筆者はスペイン留学時に歴史的建造物の修復を学び、歴史、設計、構法などを総合的に学ぶ素晴らしさを実感しました。現在もスペイン近代建築の修復事例調査を行っています。
スペインの建築家ガウディやムンタネルといったモデルニスモ時代の建築作品も修復されて現在の姿があります。これらの建築は主にレンガ造などの伝統的な建物に見えますが、その後の近代建築につながる技術的な新しさがみられます。ドメネク・イ・ムンタネルによる「カフェ・レストラン」(バルセロナ、1888年)はレンガ造と鋳鉄や鋼鉄を組み合わせた混構造であり、またレンガ壁は薄い二重の壁になっており、技術的に合理化されています。修復や再生の調査を通じて、このような建物のしくみや技術を明らかにすることも研究の成果です。
下写真:カフェ・レストラン
下図:カフェ・レストラン 構成図(木村布由子作成)
1930年代にバルセロナに建設された住宅団地であるカサ・ブロック(CASA BLOC)は、長年の居住により様々な改変が行われてきましたが、歴史的建造物として、また現役の集合住宅として再生されました。多くの住戸から少しずつオリジナルの部品を集めて、空室住戸を建設時の状態に復原した住戸ミュージアムにしています。また住民が住みながらの工事となるため、外壁を交換する工事はパネル化して1日で外側から行うなどの工夫がされています。
下写真:カサ・ブロック再生後
下写真:カサ・ブロック 住戸ミュージアム
(本記事は、東京理科大学「科学フォーラム」2016年6月号掲載の拙稿「既存建築の改修」をもとにしています)
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