はからずも実現した授業収録

 2020年度前期は建築学科のほぼすべての科目が遠隔になり、私も担当授業での対応が迫られた。ここでは、その中から1年生必修科目である「図学」を取り上げ、遠隔授業を行う上での工夫やよかった点、課題などについて述べていきたい。

 「図学」は、これまで主に板書により行ってきた。しかし遠隔授業では黒板は使えないため書画カメラを購入し、板書のように図の作画プロセスを録画して、後からその映像に説明の音声をつけて授業動画を作成した。実はこの授業は以前より授業収録したいと思っていた。板書で見るだけでなく、繰り返し動画を見ることで理解度は飛躍的に上がると思っていたからである。忙しい中で動画作成に踏み出せなかったが、はからずも今回のコロナの影響により実現できた。

 学生からの質問はLETUSのフォーラム機能を活用して行い、おおむねうまくいったと思う。その場で質問をするのとは異なり、学生も一度よく考えてから質問するので、質のよい質問が多かった。またフォーラム機能は履修学生全員が見られるため、誰かの質問が他の学生にとっても有用だったということも期待できる。

 一方で、講義科目であるが演習的な性格を持つこの授業では、友人とリアルに分からないところを教えあったりすることが難しく、このあたりはより改善が必要であると感じた。また授業動画を録音するのは授業日直前になってしまうことが多く、その際は夜中に家族を起こさないよう小声で話さなければならなかった。授業改善アンケートでは、もう少しはっきり話してほしかったという意見もあったため、反省して後期は余裕を持って準備を進めるようにしている。

 講義型の遠隔授業では対面形式で感じるストレスは少なく、効率的に授業を行うことができる。一方で対面でしか得られない一見無意味な会話なども学びの上では大切なものであり、これらをどのように組み合わせていくか、これからの教育では重要だと感じている。

(本記事は、東京理科大学教育開発センター『FD通信』2020年12月号に掲載された拙稿をもとにしています。)

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東京理科大学工学部建築学科 熊谷研究室